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介護施設の移転で介護ベッドをまとめて移送する|段取りと当日の進め方を解説

施設の建て替えや移転が決まった。新しい建物は決まったけれど、何十台もある介護ベッドを、どうやって移せばいいのか——ご担当者さまから、こうしたご相談をいただきます。

介護施設の移転は、一般的な引っ越しとは性質がまったく違います。荷物を運ぶだけの作業ではなく、入居者さまの生活を途切れさせないまま進める必要があるからです。

この記事では、介護ベッドの一括移送を中心に、移転のスケジュールの立て方から当日の進め方までを解説します。

施設の移転が、一般の引っ越しと違う3つの点

1. 入居者さまが、そこで暮らしている

住宅の引っ越しは、荷物を出してから入れます。ところが施設では、移転の当日まで生活が続いています。ベッドを外してしまえば、その夜に休む場所がなくなります。「全部出してから、全部入れる」という進め方ができません。

2. 台数が多い

30床、50床という規模になると、ベッドだけで数十台。これに車いす、テーブル、収納家具が加わります。1台あたりの作業時間に台数を掛けると、1日で終わる量ではないことが見えてきます。

3. 所有者が混ざっている

施設にあるベッドは、すべてが施設の備品とは限りません。これは後ほど詳しくご説明しますが、移転計画でもっとも見落とされやすい点です。

移転スケジュールの考え方

介護ベッドの移送に限っていえば、おおよそ次のような流れになります。

時期やること
3〜4か月前ベッドの台数と所有区分を洗い出す/新施設の部屋割りを決める
2〜3か月前搬入経路の下見/業者への相談・見積もり
2か月前レンタル品の取り扱いを福祉用具事業者と調整
1か月前移転の順番(フロア・ユニット単位)を確定
2週間前ベッドごとの番号札を用意/入居者さまとご家族への案内
前日通路の養生/工具・部品箱の準備
当日分解・搬出・搬入・組立・動作確認
翌日以降旧施設に残ったものの処分/原状回復

規模によって前後しますが、台数が多いほど、早く動き出すほど楽になります。特に新施設の部屋割りは、ベッドの配置と搬入順序を決める前提になりますので、早めに固めておきたいところです。

ベッドの台数と「所有区分」を先に洗い出す

ここが、移転計画でもっとも大切な作業です。

施設に置かれている介護ベッドは、ふつう次の3種類が混ざっています。

  • 施設の備品……施設が購入したもの。新施設へ運びます
  • 福祉用具のレンタル品……貸与事業者の所有物。新施設へ運ぶのではなく、事業者の手配で移動または返却します
  • 入居者さまの私物……ご自宅から持ち込まれたもの。ご家族との相談が必要です

この3つを分けずに「全部運んでください」と依頼すると、レンタル品まで新施設へ運んでしまい、あとで事業者との調整が必要になります。

見た目では区別がつきません。パラマウントベッドもフランスベッドも、購入品とレンタル品で同じ機種が使われていることがあるためです。

そこで、移転の3〜4か月前に台帳をつくっておくことをおすすめします。

項目記録する内容
番号1から通し番号。ベッドに札を貼ります
旧居室いまの部屋番号
新居室移転先の部屋番号
メーカー・機種パラマウント、フランスベッドなど
所有区分施設備品/レンタル/私物
付属品サイドレール、介助バー、マットレスの種類

この台帳が、当日の指示書になります。

入居者さまがいるまま、どう進めるか

施設移転でいちばん難しいのが、ここです。

フロア単位・ユニット単位で、段階的に移す

全館を一度に移すのではなく、1日ごとに1フロア、あるいは1ユニットずつ移す方法が現実的です。移動された方から新施設で過ごしていただき、残りの方は旧施設で通常どおり生活を続けます。

この方法には利点があります。初日で段取りの課題が見つかり、2日目以降に改善できるのです。50床を一気に動かして混乱するより、ずっと安全に進みます。

当日の夜、どこで休んでいただくか

ベッドを外した日の夜をどう過ごしていただくかは、必ず先に決めておいてください。考え方は2つあります。

  • 朝に移っていただき、夕方までに新施設で組み立てを終える……入居者さまの移動が先、ベッドが後
  • 予備のベッドを新施設に先行搬入しておく……到着時にはすでに休める状態

後者のほうが安心ですが、予備のベッドを確保できるかによります。数台でも先行搬入しておくと、当日の遅れを吸収する余裕が生まれます。

分解・組立を、何十台ぶん同じ日に

介護ベッドは、搬出のために分解します。一般的な電動ベッドの構成は、次のようになっています。

  • ヘッドボード・フットボード(頭側と足側の板)
  • 床板ユニット(背上げ・膝上げのための分割された板とモーター)
  • サイドフレーム
  • サイドレール(ベッド柵)、介助バー
  • マットレス

1台あたりの分解と組立には、それぞれ相応の時間がかかります。これに台数を掛けると、必要な人員と日数が見えてきます。パラマウントベッドとフランスベッドでは構造が異なり、機種によっても手順が変わります。

部品の管理が、何より大切です

何十台を同時に分解すると、ボルトや小部品が混ざります。次のものは、必ずベッドごとに袋へ入れて番号を書いてください。

  • ボルト・ナット類
  • リモコン(機種ごとに形が違います)
  • 電源コード
  • サイドレール、介助バー

リモコンと本体の組み合わせが変わると、動作しない機種があります。混ざってしまうと、新施設で一台ずつ確認し直すことになります。

ベッドと入居者さまを、確実に紐づける

見落とされがちですが、介護ベッドは「どれでも同じ」ではありません。

とくにマットレスは、入居者さまごとに選ばれています。体圧分散のためのエアマットレスを使っておられる方もいれば、硬さの異なるものを使っておられる方もいます。ベッド本体が届いても、そのマットレスが届かなければ、いつもどおりには休めません。

そのため、移送では次の単位で管理します。

ベッド本体 + マットレス + サイドレール + 介助バー + リモコン = ひとり分

この一式に同じ番号を振り、新居室の番号も書いておきます。台帳と番号札があれば、作業にあたる人が入れ替わっても、組み合わせが崩れません。

メーカーごとに、分解の手間が違う

介護用ベッドは、メーカーによって構造の考え方が異なります。何十台をまとめて動かすときは、この差が作業時間に効いてきます。

パラマウントベッド

介護施設での導入がもっとも多いメーカーのひとつです。施設向けの機種は、分解・組立を前提とした設計になっていることが多く、ボードの着脱や床板の分離がしやすい構造です。ただし機種の世代差が大きく、同じ施設の中に新旧が混在していると、手順が1種類では済みません。

フランスベッド

在宅向けから施設向けまで幅広く展開しているメーカーです。機種によって床板の構成が異なり、分解の段取りが変わります。介護ベッドとしての機能に加え、寝心地を重視した構造のものもあります。

混在しているときの進め方

施設では、導入時期の違いから複数メーカーが混ざっていることがほとんどです。この場合、メーカーと機種ごとにグループ分けして作業すると効率が上がります。同じ手順のものを続けて分解するほうが、手が覚えて速くなるためです。

台帳にメーカー名と機種名を記録しておくと、このグループ分けがそのまま当日の作業順になります。

新施設側の受け入れ準備

運び出す側だけでなく、受け入れる側の準備も必要です。

  • 部屋割りの確定……どの番号のベッドを、どの部屋に入れるか
  • 搬入経路の確認……エレベーターの大きさ、廊下の幅、居室のドア幅
  • コンセントの位置……電動ベッドには電源が必要です。ベッドを置く位置から届くかを確認します
  • 養生……新しい建物ですので、床と壁の保護は旧施設以上に慎重に
  • 置き場の確保……一時的に部材を置くスペースがあると、作業が滞りません

新築の施設では、外構工事がまだ終わっていないことがあります。トラックを建物に寄せられるか、台車が通れる舗装ができているかも、事前にご確認ください。

当日の進め方

1フロアを移す日の流れは、おおむね次のようになります。

時間帯作業
朝通路の養生/入居者さまの移動/居室の荷物を先に出す
午前旧施設でベッドの分解・番号札の確認・部品の袋詰め
昼搬出・積み込み・輸送
午後新施設で搬入・組立・動作確認
夕方マットレス・寝具を整える/電源とリモコンの確認

動作確認は、必ず組み立てたその場で行ってください。背上げ・膝上げ・高さ調整が正常に動くか、リモコンが効くかを一台ずつ確かめます。夜になってから動かないと分かると、対応が難しくなります。

当日、うまくいかなかったときの備え

計画どおりに進まないことは起こります。あらかじめ決めておくと、現場が止まりません。

ベッドが組み立てられなかったとき

部品の不足、破損、床板の歪みなどで、その場で組み立てられないことがあります。予備のベッドを1〜2台、新施設に確保しておいてください。台数が多いほど、何かが起こる確率は上がります。

時間が押したとき

優先順位を先に決めておきます。基本は「その日に休む方のベッドを先に組む」です。空室に入れる予定のベッドは、翌日に回しても構いません。

搬入経路で止まったとき

新施設のエレベーターに床板が入らない、居室のドアを通らない——こうした事態は、事前の下見で防げます。当日ではなく、2〜3か月前の段階で、実際に寸法を測っておいてください。

入居者さまの体調に変化があったとき

移転は環境が大きく変わる出来事です。移動そのものを翌日以降に延ばす判断が必要になることもあります。移転の順番を入れ替えられる余地を、計画の中に持たせておいてください。

清掃と、旧施設に残るもの

分解したベッドは、ふだん掃除できない部分が見えます。床板の裏、フレームの内側、キャスターのまわり——この機会に清掃しておくと、新施設での衛生管理が楽になります。

また、移転後の旧施設には、持っていかないものが残ります。

  • 古くなって入れ替える予定だったベッド
  • 使わなくなった車いす、歩行器
  • 家具、書類棚、事務用品
  • 厨房設備、空調機器

これらの処分も、移転計画に組み込んでおいてください。原状回復の期限が決まっている場合は、移転と並行して処分を進める必要があります。施設の引っ越しに伴う不用品回収については、別の記事でも触れています。

ご相談いただくときに伝えるとよい情報

  • ベッドの台数と、分かる範囲でのメーカー・機種(パラマウント、フランスベッドなど)
  • 所有区分の内訳(施設備品/レンタル/私物)
  • 旧施設と新施設の所在地と階数
  • 両方のエレベーターの有無と大きさ
  • 希望する移転時期と、分割できるかどうか
  • 入居者さまがいる状態での作業か
  • 旧施設に残るものの処分が必要か

旧施設の居室と廊下、新施設の搬入経路を撮った写真があると、必要な人員と日数の見当がつきやすくなります。計画の段階でも、台数とおおよその条件が分かればご相談いただけます。

まとめ

介護施設の移転でベッドを移送するときは、台数を数える前に、所有区分を分けることから始めてください。施設の備品、レンタル品、入居者さまの私物では、行き先が違います。

そして、入居者さまの生活は止まりません。フロアやユニットごとに段階的に移し、その日の夜に休んでいただける状態を必ず確保してください。

ベッド本体だけでなく、マットレス・サイドレール・リモコンまでを「ひとり分」として番号で管理すれば、作業する人が替わっても組み合わせは崩れません。

台数が多いほど、早く動き出すほど安全に進みます。計画の段階からでも、どうぞお声がけください。

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